糖尿病の食事療法、基本と長続きの工夫をご紹介

糖尿病治療の一つである食事療法は、「食生活で血糖値をコントロールする」治療法です。しかし実際のところ、何を?どのくらい?食べたらいいのかが分かりにくいですよね。

食事療法の基本は、適切な摂取エネルギー量で、バランスよく栄養素を取り入れた食事をすることです。一番の目的は、良好な血糖コントロールを保ちながら、さまざまな合併症を防ぐことにあります。
長く続けるための工夫や、具体的な摂取エネルギー量、食事内容などを紹介します。

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糖尿病に良い食事とは

糖尿病になると、食後に上昇した血糖値を下げるホルモンの量が不足したり、働きが悪くなったりすることで、慢性的に血糖値が高くなります。血管に負荷を与えて、目の網膜症や腎臓病をひき起こすことがあります。

  • 糖尿病になったら、野菜ばかりの食事にしないといけないのでは?
  • 医師から糖尿病と言われてしまった。もう甘いものを食べてはいけない?
  • 今まで何度もダイエットしたけど続かなかった。長く続けていくのは難しいのでは?

そんなマイナスイメージがありますが、大切なことは「適切なエネルギー量」と「バランスのよい栄養素」です。1日3食・1年365日を全て完璧な食生活に変えることは誰しも難しいです。糖尿病の食事療法とは、食べ過ぎや偏りを避けることが基本であり、特別な治療食ではありません。少しだけ食生活への意識を変えることで、食事「制限」ではなく「調整」を目指しましょう。

食品交換表とは

糖尿病の食事療法において、栄養バランスを整えやすいように考えられたものが「糖尿病食事療法のための食品交換表」です。

食品交換表では、食べものを6つの表というグループに分類しています。
また、1単位=80kcalの量が分かりやすいように、写真とともに掲載されています。

糖尿病 食品交換表

取り入れたい食材

糖尿病の食事療法において、特に大事なことは6つの表からバランスよく栄養を摂取することです。食べる量が多すぎても少なすぎてもいけません。また、同じ表の中で様々な食品をまんべんなく選ぶことも、いろいろな栄養素を摂取するために大切なことです。

朝食はパンだけ、昼食は麺だけ・・・というように炭水化物だけに偏った食事では、血糖値が急上昇しやすくなります。主食・主菜・副菜を基本とした定食メニューの形にすると、バランスがとりやすいです。まずは1日1食から意識してみましょう。

(献立例)
朝:食パン、ゆで卵、野菜のコンソメスープ
昼:肉うどん、ほうれん草のごま和え
夕:ご飯、鮭のホイル焼き、豆腐とわかめの味噌汁

具体的な食材:食物繊維

血糖コントロールを続けていく上で、特に意識して摂取したいものが、野菜やきのこ、海藻類に多く含まれる食物繊維です。糖の吸収をおだやかにして、血糖値の急な上昇を防ぐ効果が期待できます。お腹の調子を整える効果もあり、下痢や便秘のお悩みにもおすすめです。

適切なカロリー摂取量

1日の摂取エネルギー量の目安として、一般的な算出方法を紹介します。

摂取カロリー(kca) = 標準体重[身長(m)×身長(m)×22](kg) × 身体活動量
(身長160cmの場合:標準体重は1.6×1.6×22=56.32 kg)

身体活動量

25~30

軽い(デスクワークが多い職業)

30~35

普通(立ち仕事が多い職業)

35~

重い(力仕事が多い職業、運動量が多いなど)

(身長160cmで事務などデスクワークが多い仕事の場合:
標準体重56.32kg × 25~30 = 1408~1689kcal )

食品交換表では1単位=80kcalとして計算するため、1日の摂取カロリー量が1600kcalの場合は1日20単位になります。これを各表に振り分け、3食に配分していきます。

身体活動量

表1

9

ご飯150gを3食

表2

1

みかんを小2個

表3

5

卵、肉、魚、豆腐を1食につき50~100g

表4

1.5

牛乳をコップ1杯(180mL)

表5

1.5

加工肉の摂りすぎに注意して、油は適宜使用

表6

1.2

1日360g以上を目標に

調味料

0.8

合計

20

※糖尿病治療において適切なカロリー量は、年齢や性別、体格や活動量によって人それぞれ違います。また、長期に血糖値が高かった方が、急激にHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー・血糖コントロールの指標の1つ)を正常値まで改善させると、糖尿病網膜症が悪化することが報告されています。病院を受診されている場合は必ず医師・管理栄養士の指示を受けてください。

糖尿病の食事療法において、絶対に食べてはいけない、禁止されている食品はありません。ただ、食べる量、タイミング、頻度には気を付ける必要があります。

毎食後に甘いお菓子を食べる、うどん+丼のように主食を重ねて食べる、など糖質の摂り過ぎは急激に血糖値が上昇し、血糖コントロールが悪くなりやすいです。

味付けが濃く塩分が多いもの、脂身の多い肉などコレステロールが多いもの、甘いお菓子などの間食に注意して、食物繊維の多い野菜類を積極的に摂取します。腹八分を目安にしてバランスよく食べることは、糖尿病の有無に関わらず大切です。

食事療法での工夫、ポイント

現在の食生活を振り返り、食べ過ぎていたものがあれば減らす、不足していたものがあれば意識して取り入れていきます。長く続けるポイントは、生活習慣の中に少しずつ取り入れていくことです。

(例)

・60代男性・Aさんの場合
「ご飯をたくさん食べないと満腹にならない!毎食必ずおかわりしているけど、お菓子を食べるより良いと思う」

→味の濃い主菜や漬物などで必然的にご飯の量が増えていないでしょうか。
ご飯は自分に合った大きさの茶碗で1杯を目安に。その分野菜の料理を増やしてよく噛むことで早食いを避け、満腹中枢を刺激して満足感が得られるようにしましょう。玄米や雑穀米を取り入れることもおすすめします。

・70代女性・Bさんの場合
「季節の果物はできれば毎食食べたい!ビタミンが多いから体にも良いでしょう?」

→季節の果物を取り入れることはとてもよいことです。ただ、果物にはビタミンだけでなくブドウ糖や果糖も多く含まれます。1日にみかんなら小2個、りんごなら1個の半分を目安に、できるだけ空腹時や夜間を避けましょう。活動量の多い日中であれば、上昇した血糖値が下がりやすくなります。ビタミンや食物繊維が多い野菜は、旬の季節が特に栄養が豊富に含まれています。積極的に取り入れましょう。

・40代男性・Cさんの場合
「残業で帰りは21時を過ぎるから夕食は外で牛丼やうどんで簡単に済ませている。夕方にお腹が空いた時は炭酸ジュースを飲むことが多い」

→体内には時計遺伝子の1つが作る「BMAL1」というタンパク質があります。脂肪の分解を抑えて蓄える働きがあり、最も活性化するのは21時以降、逆に最も少ないのは14時前後です。21時以降の食事は味付けのあっさりしたおかずや汁物を中心に選び、就寝2時間前までに食事を済ませましょう。炭酸飲料は500mLに対してスティックシュガー10本分以上の砂糖が含まれていることもあるため、頻度を減らし、水分はお茶やブラックコーヒーに変更してみましょう。

「菊芋」には水溶性の食物繊維イヌリンが豊富に含まれ、糖質の吸収を抑える働きがあります。イヌリンは熱に弱く、家庭で毎日調理して摂取するのは大変です。菊芋チップスは間食としても摂取しやすく、よく噛んで食べることで満足感が得られやすくおすすめです。

まとめ

糖尿病の食事療法と運動療法は、タイヤの両輪のようなもので、どちらかが欠けては真っすぐに走り続けることができません。

糖尿病の食事療法において大切なことは、栄養のバランスです!

1食ごと、1日全体のカロリーに気を付けながら、バランスよい食事にしましょう。毎食完璧を目指す必要はありません。長く継続するために、自分に合った工夫を取り入れながら治療を続けていきましょう。

〈参考文献〉
日本糖尿病学会編・著 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版
厚生労働省 e-ヘルスネット 糖尿病の食事
厚生労働省 e-ヘルスネット 睡眠と生活習慣病の深い関係